Topic14 of j-kawamura

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北陸地方のフェーン発生の要因となる盛夏期の大規模循環の役割


   日本版長期再解析データ及び気象庁気候データ同化システムのデータを用いて、中部日本の日本海側に位置する、北陸地方の盛夏期に発生するフェーンと大規模循環場との関係を調べた.フェーン・イベントは熱帯低気圧(TC)起源のフェーンと温帯低気圧(EC)起源のフェーンの二種類に分類された.

 TC型フェーンは、台風と台風が励起する対流圏下層のテレコネクション・パターン(PJパターン)の複合によって発生する.PJパターンの卓越に伴い、日本東方で北太平洋高気圧が局所的に強化され、その強化が今度は台風経路の西偏をもたらす.局所的に強化された高気圧の西縁に沿って台風が北進することで中部日本を挟む東西気圧傾度が増大し、フェーンの発生をもたらす.
 対照的に、アジアジェットに沿う対流圏上層のテレコネクションはEC型フェーン発生の主な要因の一つとして作用する.上層の導波管を通って東へ伝播する定在ロスビー波束は、北太平洋高気圧の西方への発達を促すのみならず、高緯度から赤道方向への高渦位の移流をもたらすことによって日本海周辺の温帯低気圧の発達を促進している.両者の発達は日本付近の下層の北西-南東方向の気圧傾度の強化に必要であり、フェーン発生の好適な条件を生み出している.



*詳細は下記論文を参照してください。

Shibata, Y., R. Kawamura, and H. Hatsushika (2010): Role of large-scale circulation in triggering foehn in the Hokuriku district of Japan during midsummer. J. Meteor. Soc. Japan, 88, 313-324.

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 (作成: 柴田有紀子)