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フェーン発生時のウインドプロファイラによる大気境界層観測


 2011年5月7日に富山大学五福キャンパス内の総合研究棟屋上でウインドプロファイラによる大気境界層観測を実施した.当日の天気概況は日本海上を低気圧が通過中で、未明から南~南南東の強風が吹きフェーンが発生していた. 図1は午前10時過ぎから夕方17時にかけての観測結果である.

 10時から11時にかけて南寄りの10m/sを超える強風が観測されている.ところが、11:50~12:00頃に突然風が弱まり、風向は北北西~北寄りに反転した. 風向反転後は5~7m/s程度の北北東~北東の風が15時後半頃まで続き、その後凪の状態に移行した.12時直前の突然のフェーンの中断は大橋・川村(2007) で紹介されている「フェーンブレイク」現象であり、その様子をウインドプロファイラが捉えたものと解釈できる.近傍の富山地方気象台の観測データに よると、フェーンブレイク発生時に気温が低下し始め、11時40分頃の28.6℃から12時10分には24.4℃まで低くなっている.
 フェーンブレイクは熱的局地循環の発達に伴う海風の侵入がフェーンを弱化または中断させる現象であり、フェーンと海風の収束域では局地的に 上昇流が生じていると考えられる.図(c)を見ると、実際にフェーンブレイク時に強い上昇流が観測されている.

【参考文献】
大橋喜隆・川村隆一, 2007:夏季の北陸地方のフェーン発現日における地上風系とGPS可降水量の日変化特性. 天気, 54, 541-554.

profiler20110507.jpg

 図1  2011年5月7日の日中にウインドプロファイラで観測された(a)風向、(b)水平風速、(c)鉛直流の高度分布.
   全て10分平均値である.フェーンブレイクの発生時刻(11:50~12:00)を黒い矢印で示す.