台風の遠隔強制がもたらす集中豪雨
従来の研究では、季節内変動や年々変動スケールにおいてPJテレコネクションパターンの挙動が調べられてきたが,熱帯低気圧あるいは台風のような総観スケールの擾乱によってもPJパターンが励起されることが明らかになってきた.
台風熱源がPJを励起することで,日本東方において高気圧が発達し,台風に伴う低圧部との間で東西気圧傾度が強化される.その結果として,低緯度域からの暖湿気流が促進され,太平洋沿岸地域で大雨が生じやすくなる.台風が日本から遠く離れた海域にあっても,台風が南からの水蒸気供給を促すことで,梅雨前線や秋雨前線を活発化させるという説明を天気解説としてよく聞くが,南からの水蒸気供給という現象に,実は台風がPJパターンの励起を通して日本東方の高気圧を遠隔的に強化するという重要なプロセスが隠されているのである.
このような台風の遠隔・間接強制は,過去にも集中豪雨による気象災害の発生に寄与しており,2000年9月の東海豪雨もその典型事例の一つである.
*詳細は下記論文を参照してください.
Kawamura, R., and T. Ogasawara, 2006: On the role of typhoons in generating PJ teleconnection patterns over the western North Pacific in late summer.SOLA, 2, 37-40.
Yamada, K., and R. Kawamura, 2007: Dynamical link between typhoon activity and the PJ teleconnection pattern from early summer to autumn as revealed by the JRA-25 reanalysis.SOLA, 3, 65-68.