Interdecadal variations of radiative feedbacks associated with the El Niño and Southern Oscillation (ENSO) in CMIP6 models
温暖化を全球的に評価する際には, 温室効果ガスの濃度が倍増した時に全球的にどれくらい気温が上昇するかで定義される, 気候感度と呼ばれる指標がしばしば用いられる. 気候感度は, 全球的な温度上昇に対する気候システムの放射応答の大きさ(放射フィードバック強度)を元に, 算出される(Knutti et al. 2017ほか). 気候感度の計算は, 一般的に放射フィードバック強度が一定であるという仮定の元(つまり, 温暖化が一様に進行するという仮定の元)に行われるが, 実際には温暖化の進行は昇温パターンの分布とそれに伴う循環場や雲の分布の変化によって加速・減速させられることが近年指摘されている(パターン効果と呼ばれる cf. Zhou et al. 2016; Stevens et al. 2016ほか). パターン効果に影響を与える要素として, これまで数十年規模の気候系内部変動について多く研究がなされてきた. しかし, より短い時間スケールの内部変動も放射フィードバックの評価に影響を与える可能性が指摘されているが(Wills et al. 2021), パターン効果への影響については十分に明らかになっていない.
そこで本研究では, 第6期相互モデル比較プロジェクト(CMIP6)における産業革命前実験のデータを元に, 数年規模の内部変動に伴う放射フィードバック強度の変調とその物理メカニズムについて明らかにした. 主な結果は以下の通りである.
(i) 数年規模の内部変動に伴う放射フィードバック強度は, 背景場における赤道太平洋上の海面温度の南北コントラストと関連して変調する(Fig 2a, b).
(ii) 背景場の変化は, より短い時間スケールの変動: 主にエルニーニョ・南方振動(ENSO)を変調させる(Fig 2c).
(iii) ENSOの振幅が大きくなることに伴って, 全球的に1度上昇する時の赤道太平洋の昇温率も大きくなる. 赤道上での大きな昇温は, 南北方向の循環(局所ハドレー循環)を強化し, 亜熱帯域における中〜上層雲の減少と下層雲の増加が外向き放射を強化する. 結果として, 全球的な放射フィードバックも, 負に強化される.
以上の結果から, 数年規模の内部変動の変調と関連して, 放射フィードバック強度の大きさも変化することが明らかになった. 本研究で明らかになった背景場の特徴は, 先行研究におけるパターン効果の特徴(負のフィードバック強度が強化される時の場の特徴)と比べ, 概ね逆のパターンとなっている(例として, Dong et al. 2019). このことは, 観測などの短期間のデータから放射フィードバック強度やパターン効果を見積もる時に, 数年規模の内部変動が大きな不確実性を与える可能性を示唆している.
*Please refer to the following manuscript.
*詳細は下記論文を参照してください。
Tsuchida, K., Mochizuki, T., Kawamura, R., & Kawano, T. (2023):
Interdecadal Variations of Radiative Feedbacks Associated With the El Niño and Southern Oscillation (ENSO) in CMIP6 Models.
Geophysical Research Letters., 50(23). https://doi.org/10.1029/2023GL106127