Research7 of j-kawamura

HOME > What's New

1999年夏季北陸地方で観測されたフェーン現象の異常持続
(J. Meteor. Soc. Japan, vol. 80, pp. 579-594に掲載)


 北陸地方の富山市で1999年7月30日から8月3日にかけてフェーン現象の異常持続が観測された。1975年から1999年までの25年間の統計では 5日連続のフェーン発生は初めてである。日本の東方海上の高気圧性循環が5日間にわたって強化している間、シベリア南東部で急速に発達した温帯低気圧及び東シナ海を北上した台風が高気圧性循環との間の気圧傾度を強めた。結果として、中部山岳地帯上空で南よりの地衡風成分が卓越しフェーンの異常持続が生じやすい好適な条件をもたらした。

 観測とモデル結果から、西部熱帯太平洋の対流加熱に励起されたPJパタンが1999年7月の月平均場にみられ、日本付近で東西気圧傾度が強まることにより中部日本上空を横切る南よりの地衡風成分を強化していた。PJパタンが励起し持続すると、隣接する総観スケールの擾乱の発達・移動に影響を与える。PJパタンの励起及び関連する総観スケールの擾乱の複合効果が北陸地方を中心とする日本海沿岸地域のフェーンの異常持続をもたらしたと考えられる。このPJパタンは、西部熱帯太平洋暖水域の対流活発地域が典型的な日本の暑夏年と較べて20°西偏、2-3°北偏していたことにより、その卓越地域と形状が特異であった。この偏移は暖水域の高海水温偏差域の西偏によるものと考えられる。

foehn.jpg

1999年7月の850hPa高度、風ベクトル偏差の空間分布(観測)
等値線間隔は10 m、青い(赤い)領域はGMS赤外輝度温度の顕著な負偏差(正偏差)領域を示す。

フィリピン北の活発な対流活動(青い領域)によって、九州南方に低気圧、日本の東海上に高気圧偏差が形成されている。低気圧と高気圧に挟まれた地域(中部日本)では南寄りの地衡風が強まっている。