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爆弾低気圧とは

爆弾低気圧とは?

一般に低気圧と呼ばれる大気の擾乱は、熱帯低気圧と温帯低気圧に大別されます。
熱帯低気圧は読んで字のごとく熱帯域で発生・発達する低気圧で、強く発達したものを地域によって台風、ハリケーン、サイクロンと呼んでいます。一方、中緯度地域で発生・発達する温帯低気圧の中でも、短時間に急激に発達する低気圧があります。

そのような温帯低気圧を最初に包括的に調査したSanders and Gyakum(1980)は、論文の中でMeteorological “bomb”(気象学的な“爆弾”)という呼称を使っています。和訳では通称「爆弾低気圧」と呼ばれています。英語表記では、bomb cycloneやexplosive cycloneなどの表現が他の論文でも見受けられます。
「爆弾低気圧」という呼称は適切とは言えませんが、気象学分野の専門用語としてこれまで慣例的に使用されてきた経緯もあり、本データベースにおいても「爆弾低気圧」という呼称を用います。

Sanders and Gyakum(1980)によれば、中心気圧が24時間で24hPaを超える急速な気圧低下を示す温帯低気圧を「爆弾低気圧」として定義していますが、あくまでも一つの目安であり、研究者によっては異なる定義を用いている場合があります。
本データベースにおいても、その定義は少なからず異なっています。
詳細はアルゴリズムについてのページを参照してください。

爆弾低気圧がもたらす災害

深刻な気象・海象災害をもたらすという点において、熱帯起源の台風と中緯度起源の爆弾低気圧は双璧をなす総観規模擾乱ですが、台風は主に夏季から秋季、爆弾低気圧は主に冬季から春季にかけて日本に大規模災害をもたらすことがあります。
被害地域は共通点も多いですが、爆弾低気圧は日本海沿岸や北海道・東北の太平洋沿岸の高波被害や局地的大雪の発生要因として非常に重要な擾乱です。また、海難事故(船舶の座礁や転覆など)の原因ともなります。

具体例をあげますと、

  • 高波被害(例:2008年2月24日の富山県入善町・黒部市の護岸施設の破壊、家屋浸水・倒壊、2人死亡)
  • 船舶の転覆・座礁等の海難事故(例:2006年10月6日の茨城県鹿島港外での貨物船の座礁・船体切断、宮城県女川港沖の漁船座礁による乗組員16人全員が死亡・行方不明)
  • 日本海沿岸地域での雪氷災害(例:北信越地方の平成18年豪雪)
  • 竜巻被害(例:2006年11月7日の佐呂間竜巻で9人死亡)

爆弾低気圧の経路によっては太平洋沿岸地域の豪雨災害を発生させる場合もあります。
人的被害のみならず、農作物被害やライフラインの損傷など経済的損失も多大です。

参考文献

  • Sanders, F., and C. A. Davis, Patterns of thickness anomaly for explosive cyclogenesis over the west-central North Atlantic Ocean, Mon. Weather Rev., 116, 2725-2730, 1988.
  • Yoshiike, S., and R. Kawamura, Influence of wintertime large-scale circulation on the explosively developing cyclones over the western North Pacific and their downstream effects, J. Geophys. Res., 114, D13110, doi:10.1029/2009JD011820, 2009.