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アルゴリズムについて

使用データ

爆弾低気圧の抽出に使用したデータは、気象庁と電力中央研究所の共同研究「長期再解析プロジェクト(Japanese long-term reanalysis project: JRA-25)で提供されている大気再解析データ(期間:1979-2004年)です。JRA-25提供の海面更正気圧(6時間間隔、経度1.25º×緯度1.25º)を基に以下のアルゴリズムで低気圧の抽出とトラッキングを行っています。

なお、2005年以降のデータは気象庁気候データ同化システム(Japan Meteorological Agency Climate Data Assimilation System: JCDAS)提供の同様なデータを利用しています。

低気圧の抽出と自動トラッキングのアルゴリズム


海面更正気圧(SLP)のデータを使用して半径300kmの領域で最小気圧の位置を探し、周囲よりも0.5hPa以上低ければ、低圧部として抽出します。抽出は北緯20°から北緯60°まで、東経110°から東経180°までの領域を対象としています。


発生から6時間後の位置を東西に各9.0°、南北に各6.0°の範囲で次の低圧部の位置を探索します。


その後も同様に低圧部が移動すると仮定した位置から、東西に各9.0°、南北に各6.0°の範囲で次の低圧部を探してトラッキングしていき、24時間以上持続したものを対象とします。

爆弾低気圧の定義

トラッキングされた低気圧について、Yoshida and Asuma(2004)の研究に従って以下の発達率(ε)を計算し、εの最大値が1(hPa/hr)を超えた場合に爆弾低気圧(explosive cyclone)と定義しています。

ここで、p は海面更正気圧(SLP)、t は時刻(hours)、φは低気圧中心の緯度を示しています。発達率は、12時間でどの程度急速にSLPが低下したのかで評価しています。また、最初に爆弾低気圧を定義したSanders and Gyakum (1980)の研究によれば、発達率を緯度60°で規格化していますが、本データベースでは日本近海の爆弾低気圧を対象としていることから、緯度45°で規格化しています。

データベースへの入力

上記のアルゴリズムで抽出した低気圧の中で、爆弾低気圧と定義された低気圧の経路や最大発達率等の情報がデータとして入力されています。あくまでもアルゴリズムで低圧部の抽出を行っているため、低気圧の発生位置は気象庁天気図のそれとは必ずしも一致していません。使用データの空間分解能が粗いため、気象庁天気図の低気圧発生位置から少し遅れて抽出される場合が多いことに注意が必要です。

また、補足説明として以下の点に留意して下さい。

  • 災害情報の観点から、東経160°以東で最大発達率を示した爆弾低気圧は日本への影響がほとんどないと考えられるため、データベースから除外されています。
    そのため、本データベースが北西太平洋域の全ての爆弾低気圧を網羅している訳ではないことに留意が必要です。
  • 複数の低気圧が発達の途中で併合し、爆弾低気圧として抽出された場合には、原則発生の早い低気圧の方の経路がデータとして入力されています。
    気象庁天気図、衛星画像と照らし合わせて併合前後を確認しています。
  • 爆弾低気圧が完熟期の段階に入り、低気圧の中心が複数に分裂したように見える場合には、その時点で経路データの入力は終了としています。
  • 気象庁天気図と照らし合わせて、低気圧の自動トラッキングに明らかに間違いがある場合(途中で異なる低気圧をトラッキングしてしまうことなど)には、適宜修正を加えています。

参考文献

  • Sanders, F., and C. A. Davis, Patterns of thickness anomaly for explosive cyclogenesis over the west-central North Atlantic Ocean, Mon. Weather Rev., 116, 2725-2730, 1988.
  • Yoshida, A., and Y. Asuma, Structures and environment of explosively developing extratropical cyclones in the northwestern Pacific region, Mon. Weather Rev., 132, 1121-1142, 2004.