[被害情報]
2014年(平成26年)12月16日に九州の南海上で発生した低気圧は、急速に発達しながら日本の南岸に沿うように北上した。この低気圧の影響で、少なくとも26道府県で人的被害、建物被害、交通被害、農業被害、ライフライン被害が生じた。
①北海道では、暴風雪や高潮などにより死者1名、軽傷者2名の人的被害、住宅被害、交通障害が生じた。交通機関に関しては、国道19路線、道道148路線で通行止めになったほか、JRや航空機に運休が発生した。根室地方では、別海町で標高約2.1 m、根室港で標高約2.0 mの高潮が発生し、合わせて住宅21棟に床上または床下浸水の被害が生じた。
②青森県では、青森空港で欠航が発生したほか、JRや青い森鉄道で運休が発生するなど交通機関に障害が生じた。強風や大雪により、青森市、むつ市、横浜町、佐井村で合わせて1277戸が停電した。
③岩手県では、重傷者1名の人的被害が生じた。ライフラインは、大槌町で延べ18戸において停電が発生した。交通機関に関しては、JRや三陸鉄道で運休や遅れが発生した。
④宮城県では、JRの列車に63本の運休が発生し、交通機関に乱れが生じた。
⑤秋田県では、大雪により死者1名の人的被害が生じた。
⑥山形県では、山形新幹線や山形鉄道フラワー長井線に運休が発生し、交通機関に乱れが生じた。暴風によりトタン屋根がはがれるなどの4棟の住宅被害が生じた。ライフラインは、延べ5513戸で停電が発生した。
⑦群馬県では、JR我妻線や上越線で運休や遅れが発生するなど、交通機関に乱れが生じた。
⑧新潟県では、死者1名、重傷者8名、軽傷者7名の人的被害が生じた。ライフラインに関しては、柏崎市など7市で2715戸に停電が生じた。交通機関に関しては、JR、航空機、フェリーの多くに欠航が生じた。また雪の影響により、北陸道の一部区間が通行止めとなったほか、津南町の国道405号で土砂崩れが発生し、津南町大赤沢の19世帯41人と長野県栄村小赤沢などの109世帯235人が一時孤立した。
⑨富山県では、死者1名、軽傷者1名の人的被害が生じた。海上を中心に強風が吹き、魚津市や朝日町沖など4か所で定置網が破損する漁業被害が生じた。また、高波により伏木富山港海岸突堤の一部が破損した。
⑩石川県では、重傷者2名、軽傷者1名の人的被害が生じた。交通機関に関しては、JRの特急列車が105本運休した。ライフラインに関しては、七尾市や輪島市などで2000戸以上が停電した。
⑪福井県では、強風の影響によりJRの特急列車や普通列車に運休が生じるなど、交通機関に乱れが生じた。
⑫長野県では、死者1名、重傷者1名、軽傷者2名の人的被害が生じた。交通機関に関しては、JRに60本の運休が生じた。ライフラインに関しては、松本市や長野市などで720戸が停電した。新潟県津南町の国道405号で土砂崩れが発生し、長野県栄村小赤沢など5集落の109世帯235人と新潟県津南町大赤沢の19世帯41人が一時孤立した。
⑬岐阜県では、軽傷者2名の人的被害が生じた。JRや長良川鉄道、岐阜バス、濃飛バスに運休などが生じ、交通機関に乱れが生じた。また、東海北陸自動車道の白鳥IC~荘川ICにおいて、約70台が立ち往生するなど、一般道も含め通行止めが相次いだ。ライフラインに関しては、岐阜県内の広範囲で約7850戸が停電し、高山市の約50戸で断水が生じた。
⑭静岡県では、強風の影響により交通機関に乱れが生じた。JR東海道線では、菊川駅と浜松駅の間で一時運転を見合わせた。駿河湾フェリーは17日の全便が欠航となり、静岡空港に到着予定の航空機も1便欠航した。
⑮愛知県では、名古屋市で17日夜から降り始めた雪が18日早朝には23 cmの積雪を観測し9年ぶりの大雪となった。この影響により、東海道新幹線、名古屋鉄道、近畿日本鉄道の各交通機関に遅れが生じた。
⑯三重県では、降雪や路面凍結が原因とみられる交通事故が139件生じた。
⑰大阪府では、交通機関に乱れが生じ、航空機に関しては、大阪(伊丹)空港発着の66便と関西国際空港発着の3便が欠航した。鉄道に関しては、北陸方面へ向かう特急「サンダーバード」などが運休した。
⑱兵庫県では、雪の影響で交通機関に乱れが生じた。JR山陰線佐津駅では、信号トラブルが発生し、計4本に遅れが生じた。航空機に関しては、但馬空港と大阪(伊丹)空港を結ぶ4便が欠航した。
⑲奈良県では、強風の影響で交通機関に乱れが生じた。JRでは大和路線の柏原駅と王寺駅の間などで一時運行を見合わせた。近鉄では、吉野線の六田駅と吉野駅の間で一時運行を見合わせ、上下線合わせて10本に部分運休が生じた。
⑳鳥取県では、強風や大雪の影響で交通機関やライフラインに乱れが生じた。JRでは、山陰線下北条駅と折居駅(島根県)の間で風速が規制値に達したため運転を一時見合わせ、計59本が運休、計83本に遅れが生じた。航空機に関しては、米子-羽田便、鳥取-羽田便の計8便が欠航した。ライフラインに関しては、雪や強風の影響で、米子、大山、北栄、鳥取の4市町の計1万3200戸で停電が生じた。
㉑島根県では、隠岐の島沖で中国籍の漁船が浅瀬に乗り上げる海難事故が発生した。乗組員25名のうち23名が救助されたが、2名が行方不明、6名が病院に搬送された。強風の影響で交通機関に乱れが生じ、JR山陰線の計59本が運休、部分運休した。
㉒広島県では、雪の影響で交通機関やライフラインに乱れが生じた。山陽新幹線では広島県三原と福岡県小倉の間で、17日の始発から徐行運転を行った。ライフラインに関しては、風雪の影響により安芸太田町と広島市安佐北区で約260戸が一時停電した。
㉓山口県では、積雪や強風の影響で、交通機関に乱れが生じた。岩国錦帯橋空港では、積雪により滑走路が閉鎖され、17日午前に発着予定だった2便が欠航した。JRは、山陰線益田駅と小串駅の間で強風により速度制限が生じ、計7本に遅れが生じた。
㉔徳島県では、雪の影響で交通機関とライフラインに乱れが生じた。高速道路に関しては、美馬市の脇町ICと愛媛県の川之江東JCT間で一時通行止めとなった。バスに関しては、徳島と広島間の高速バスが雪の影響で4本運休したほか、路線バスも運休や遅れが生じた。ライフラインに関しては、雪の影響でつるぎ町半田の161戸で一時停電が発生した。
㉕香川県では、強風の影響により交通機関に乱れが生じた。JR瀬戸大橋線では、16日16時10分ごろから17日昼過ぎにかけて坂出駅と児島駅間、宇多津駅と児島駅間で運転を見合わせた。JR土讃線では17日、善通寺市金蔵寺駅付近の屋根が強風により壊れ、駅構内にその一部が吹き飛ばされたため、一時運転を見合わせた。また、16日から17日にかけて高松港を発着する高速船やフェリー合わせて68便が欠航した。
㉖愛媛県では、四国中央市、八幡浜市、西予市の879戸で停電が発生したほか、交通機関に乱れが生じた。また、南予地方では風雪と低温により、温州みかんを中心に農業被害が生じた。
[気象・海象状況]
この低気圧の影響により、12月16日に東京都神津島村神津島で最大瞬間風速41.7 m/s、12月17日に北海道根室市納沙布で最大瞬間風速38.3 m/sを記録し、それぞれ観測史上1位を記録するなど全国的に暴風が吹き荒れた。低気圧が日本列島に接近した12月16日0時から12月18日24時までの間に、13道府県にある気象庁の観測地点において少なくとも27地点で最大風速が12月の1位を更新した(統計期間10年以上の地点を対象)。低気圧に伴う暴風によって、北海道根室地方では高潮災害が発生し、北海道別海町では標高約2.1 m、北海道根室市根室港では標高約2.0 mの高潮が観測された。
また、12月18日に愛知県名古屋市で12月としての降雪の深さの日合計の1位となる16 cmを記録したほか、12月17日に新潟県魚沼市大湯で12月としての日降水量の1位となる109.0 mmを記録するなど、各地で大雪となった。