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台風とは

台風とは?

熱帯低気圧(tropical cyclone)は低緯度域で発生する総観規模擾乱で、水蒸気の凝結による潜熱が駆動源となって発達していく低気圧です。空間スケールは数100kmから1000km程度におよびます。ある強度まで発達した熱帯低気圧を、地域によって台風(Typhoon)、ハリケーン(Hurricane)、サイクロン(Cyclone)と呼び名がついています。
ただし、それぞれの定義にはローカルルールがあります。

たとえば、ハリケーンは最大風速が時速74マイル(64ノット)以上の熱帯低気圧と定義されていますが、気象庁では台風は最大風速がおよそ17m/s(34ノット)以上の熱帯低気圧と定義されています。米国では最大風速を基準に熱帯低気圧を風速の小さい方から順にTropical Depression、Tropical Storm, Hurricane, Major Hurricaneの4つに分類しています。気象庁では最大風速34ノットを閾値として、「台風」と台風の基準に達しない「熱帯低気圧」の2つに大別しています。
米国の分類との対応関係をみると、Tropical Stormが最大風速34ノット以上と定義されているので、Tropical Storm以上が「台風」に相当します。また、Tropical Depressionが「熱帯低気圧」にほぼ対応しています。

なお、国際的な統一基準ではTyphoonはHurricaneと同じ基準で定義されています。詳細については世界気象機関(WMO)の報告書等を参照して下さい。

台風の強さと大きさ

気象庁では台風の強さを3つのカテゴリーに分類しており、最大風速がおよそ33m/s(64ノット)以上を「強い」、44m/s(85ノット)以上を「非常に強い」、54m/s(105ノット)以上を「猛烈な」台風と定義しています。
「強い」台風はHurricaneの基準に相当します。最大風速が時速111マイル(96ノット)以上で定義されているMajor Hurricaneは、気象庁定義の「非常に強い」台風と「猛烈な」台風の中間にあたります。

また、米国のNational HurricaneCenterではハリケーンに伴う強風・暴風についてカテゴリー1からカテゴリー5(Saffir-Simpson Hurricane Wind Scale)に分類しています。カテゴリー1から2はHurricane、カテゴリー3から5はMajor Hurricaneに対応します。カテゴリー5は最大風速が時速157マイル(137ノット)以上のハリケーンで、最大風速およそ70m/s以上の台風に相当し、カタストロフィック的な甚大な被害を与える可能性があります。

台風の大きさについては、気象庁は風速15m/以上の強風域の範囲に注目して、強風域の半径が500km以上を「大型(大きい)」、800km以上を「超大型(非常に大きい)」台風と定義しています。

台風がもたらす災害

直接影響

台風は構造上の特性から、台風を中心に暴風域や強風域を伴っており、内部コア領域の眼の壁雲やスパイラル状降雨帯では多量の降水が生じているため、暴風・強風や局地的豪雨による深刻な風水害が発生します。また、台風周辺ではしばしば竜巻等の突風災害が発生します。
台風の東側では低緯度域から暖湿気流(高相当温位の空気)が流入し下層大気が不安定化する一方、日本付近の中緯度偏西風帯に台風が侵入してくるため、台風の北側では水平風の鉛直シアー(下層風と中層の風の風向・風速の違い)が大きくなり、これら二つの条件が重なると竜巻が発生しやすくなります。
このような環境場は台風の位置を原点とした座標系において北東象限中心に形成されるため、実際に竜巻もその象限中心に多く発生しています。

また、台風に伴う気圧低下による「吸い上げ効果」と強風による「吹き寄せ効果」によって海面が上昇し、さらに満潮が重なると、深刻な高潮災害がもたらされます。さらに、暴風による高波(異常波浪)によって船舶の転覆や座礁などの海難事故の発生も少なくありません。

遠隔影響

台風は多量の潜熱を放出して周囲の大気を加熱するため、台風周辺の大気循環に影響を与えます。
具体的には、台風熱源によるロスビー波応答で台風の西側で対流圏下層に低圧部、(北)東側で高圧部が形成されます。
たとえば、梅雨期に日本から遠く離れた南方海上に台風が位置している時に、台風の北東側で局所的に高気圧が強まり、台風との間で下層の東西気圧勾配が大きくなるため、台風の東側では日本付近へ流入する暖湿気流が強化されます。結果的に梅雨前線帯を活発化させ、度々局地的豪雨が発生します。
このような台風の遠隔影響は秋雨期などにもみられ、直接影響と同様に、減災・防災の観点から詳しく調べる必要があります。

参考文献

  • 櫻井渓太・川村隆一, 日本における竜巻発生の環境場と予測可能性.天気, 55, 7-22, 2008.
  • Hirata, H., and R. Kawamura, Scale interaction between typhoons and the North Pacific subtropical high and associated remote effects during the Baiu/Meiyu season. Journal of Geophysical Research: Atmospheres, 119, 5157-5170, 2014
  • Kudo, T., R. Kawamura, H. Hirata, K. Ichiyanagi, M. Tanoue and K. Yoshimura, Large-scale vapor transport of remotely evaporated seawater by a Rossby wave response to typhoon forcing during the Baiu/Meiyu season as revealed by the JRA-55 reanalysis. Journal of Geophysical Research: Atmospheres, 119, 8825-8838, 2014.